なぜか急に咳き込む…もしかしたら「咳過敏症」?

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冷気や香り、煙、笑いなど、ささいな刺激で咳が止まらなくなる症状とは

「検査をしても異常はないのに、なぜか咳が止まらない」――。これまで原因不明とされてきた長引く咳の中に、「咳過敏症(咳過敏症候群)」と関係しているものがあります。呼吸器内科医の皿谷先生にお話を伺いました。

エアコンの風が当たると咳が出る、柔軟剤や香水の匂いをかぐと急に咳き込む、普通に話しているだけで咳が止まらなくなる――。普段なら咳が出ないようなわずかな刺激でも咳が出ることがあります。
咳は異物や分泌物などを気道から外へ排出する防御反応です。のどには刺激を感知する感覚神経があり、いわば咳のセンサーとして働いています。
ところが「咳過敏症」では、このセンサーが敏感になって、香りや温度の変化など無害な刺激にも過剰に反応して、激しい咳が出てしまうのです。
咳がひどくなると、仕事や会話など日常生活に支障をきたすこともありますし、咳が続くことで、尿漏れや肋骨の痛みに悩む人もいます。

咳過敏症のきっかけはさまざま

咳過敏症のきっかけのひとつが、風邪などの感染症です。感染による炎症をきっかけに、のどや気道の感覚神経が敏感になり、感染症そのものが治ったあとも咳だけが長く残ることがあります。
ほかにも喘息や咳喘息、胃食道逆流症、後鼻漏(こうびろう)など、咳をともなう病気がきっかけとなり、過敏性が高まってしまうこともあります。
なかには「笑うと咳が出る」「話していると咳き込む」という人もいます。これは、笑ったり会話をしたりするときの呼吸や発声の変化が、過敏になったのどや気道への刺激になるためと考えられます。普通なら気にならない程度の刺激でも、咳のセンサーが敏感になっていると、それをきっかけに咳が出ることもあるのです。

エアコンの風に当たる、香水や柔軟剤のにおいをかぐ、会話をしたり、笑ったりするといった程度で激しく咳き込むという人も。

慢性的に咳が続く場合は、注意が必要

咳が8週間以上続き、前述の笑いや会話、冷たい空気、においなどのちょっとした刺激で激しく咳き込む場合は、呼吸器内科など医療機関を受診しましょう。
肺結核や間質性肺炎、肺がんなど重大な病気がないかを調べます。そのうえで、咳喘息やアレルギー性鼻炎、胃食道逆流症など、咳の原因となる病気がないかを調べ、それぞれに応じた治療を行います。
それでも咳が改善しない場合や、原因となる病気を治療しても咳が残る場合、あるいは詳しく調べても原因がわからない場合には、「咳過敏症」という視点から治療を検討します。
2025年に改訂された「咳嗽・喀痰(がいそう・かくたん)の診療ガイドライン第2版 2025」では、こうした難治性・原因不明の慢性咳嗽について、咳過敏症の病態も含めて掲載されています。
※参考記事「その咳大丈夫? 長引く咳、止まらない咳の原因は」(2026年2月)

咳過敏症を抑える薬も登場

わずかな刺激でも咳を起こしてしまう「咳のセンサー」に注目して開発されたのが、ゲーファピキサントという薬です。気道にある感覚神経の活性化を抑えて、咳を抑制する効果がありますが、味がわかりにくくなる味覚障害を起こすことがあります。医療機関での治療とあわせ、咳を起こしやすい刺激を減らす工夫をしてみましょう。
例えばのどが乾燥すると刺激を感じやすくなるため、こまめに水分補給をしたり、加湿器や濡れたタオルを干したりして、湿度を40~50%に保つのもよいでしょう。ほかにも「のどがムズムズして咳が出そう」というときは、すぐに咳をせず、あごを軽く引いて、少量の水や唾液をのみ込んでみるのもひとつの方法です。

咳が出そうになったら、あごを引き、胸に近づけた状態で水や唾液を「ごっくん」とのみ込む。

(2026.9.4掲載)

皿谷健(さらや たけし)先生

杏林大学 呼吸器内科 教授
日本マイコプラズマ学会理事、日本感染症学会感染症専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本内科学会総合内科専門医
聴診を含めた身体所見、胸水診断や間質性肺炎、マイコプラズマ肺炎の研究を行う。漢方診療も行っている。

制作協力:NHKエデュケーショナル

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