のどの乾燥、夏こそ注意! 水分をとってもうるおわないのはなぜ?
- コラム
酷暑と冷房からのどを守る水分のとり方と鼻呼吸

このところの日本の夏はエアコン(冷房)なしではとても過ごせませんが、冬と同じくらいのどが乾燥しやすくなることをご存じでしたか。
夏ののどケアについて、石井先生にお話を伺いました。
猛暑が続く日本の夏は、室内でも熱中症になるリスクがあります。熱中症予防のため、エアコンは適切に使うことがとても大切です。
ただ冷房中の室内では空気が乾きやすいので注意が必要です。その理由は、空気を冷やす際に、空気中の水分を取り除き、室温だけでなく湿度も低くしてしまうためです。その乾いた空気を吸い続けると、鼻やのどの粘膜のうるおいがなくなり、のどの大事な役割であるバリア機能が低下してしまいます。この時期、多くの人が寝るときにエアコンをつけていると思いますが、送風が直接当たらないようにしたり、扇風機を使って空気を循環させたりするなど工夫するようにしましょう。
※参考記事「夏バテのどの健康回復」(2023年9月)
水分補給にも工夫が必要
夏は大量の汗をかくため、体内の水分バランスが崩れやすくなります。炎天下では短時間の外出でも想像以上に汗をかき、体内の水分や塩分が失われます。たとえば、炎天下を10分ほど歩いただけで100ml以上の汗をかくこともあります。水分補給をしないままでいると、軽い脱水状態になって、唾液の分泌量も減少します。すると、口の中も乾きやすくなり、のどの乾燥につながります。
ちなみに、医療の現場では、口の中やわきの下の乾燥は、脱水を疑うサインのひとつとされています。強いだるさ、めまい、ふらつき、尿量の減少、意識がぼんやりするなどの症状を伴う場合は、早めに医療機関に相談しましょう。
また水分補給は少量ずつこまめにとるようにします。暑い日はのどが渇く前からこまめに水分をとりましょう。口の中を湿らせることで唾液の分泌を助けます。外出時や運動時、大量に汗をかいたときは、水分だけでなく塩分の補給も必要です。とくに運動中や暑い日は、水や麦茶などを15~20分おきに少しずつでもとるように心がけてください。
なおアルコールは利尿作用があり、水分補給には適しません。ほかにもジュースなど糖分の多い清涼飲料水を水のかわりにたくさん飲むのはやめましょう。糖分の多い飲料を大量に飲み続けると、血糖値が急激に上がり、強い口の渇きや多尿、倦怠感などを起こす「ペットボトル症候群」を発症する恐れがあるので注意が必要です。
さらに気をつけたいのがドラッグストアなどで手軽に購入できる「経口補水液」です。経口補水液は、脱水時に水分と電解質(ナトリウムやカリウム)を補給するための飲み物で、健康な人が日常的に飲むものではありません。飲み続けることで塩分過多となり、高血圧のリスクにつながる可能性があります。
消費者庁も、経口補水液は日常的に飲むものではなく、大量・常用することで血圧や心臓への負担につながるおそれがあるとして注意を呼びかけています。

水や麦茶などでこまめな水分補給を心がける。利尿作用のあるアルコールや糖分の多い清涼飲料水は控えめに。
のどを守るカギは、鼻の加湿・温度調整機能
もう一つ見落とされがちなのが、呼吸が浅くなることです。一般に疲労、ストレスを感じると呼吸が浅く速くなり、人によっては口呼吸になりやすくなります。この状態は暑いときも同様で、暑さで息苦しさを感じると、無意識に口が開いてしまいます。口呼吸をしていると熱い空気が直接のどに届くため、口の中やのどの乾燥がさらに進んでしまいます。そこで、意識的に鼻から空気を取り入れるようにしましょう。 鼻には吸い込んだ空気を加湿し、肺に届く前に温度を整える働きがあります。冷房の冷たい空気も、屋外の熱い空気も、口から直接吸い込むよりも鼻を通して吸うことでのどへの刺激をやわらげることになります。
また、ゆっくり呼吸することは、心身の緊張をゆるめることにもつながります。夏に浅くなりがちな呼吸を整えるために、鼻からゆっくり息を吸い、深く呼吸をすることを意識してみましょう。
鼻の加湿機能をいかしてのどへの負担を減らし、快適に夏を乗り切りましょう。

暑さで口呼吸になりがちに。ゆっくりとした鼻呼吸を意識して、呼吸を整え、のどをいやそう。
ただし「鼻づまり」があると鼻呼吸は簡単に行えません。鼻炎や副鼻腔炎が続く場合は、のどの乾燥や睡眠の質にも影響するため、耳鼻咽喉科で相談しましょう。
さらに、のどの痛みや声がれが長引く、発熱を伴う、のみ込みにくい、息苦しい、血痰がある、強い脱水症状があるなどの場合は、自己判断せずに必ず医療機関に相談しましょう。

石井正則(いしい まさのり)先生
JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長
日本耳鼻咽喉科専門医。神経耳科(めまい、耳鳴り、難聴)や自律神経の診察や検査も得意としている。ヨガの公認インストラクターでもあり、院内ヨガやストレス疾患の専門治療施設で指導。耳鼻咽喉科心身医学研究会の発起人メンバーであり、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙医学審査会委員アドバイザーもつとめる。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など幅広く活躍。
制作協力:NHKエデュケーショナル




