のどの渇きに気づきにくい高齢者の熱中症予防
- コラム
「のどが渇かない」「むせるのがイヤ」は危険信号

日中の炎天下だけでなく、室内や夜間でも起こる「熱中症」。とくに、高齢者がなりやすく、救急搬送された人の半数以上は65歳以上といわれています。高齢者の熱中症対策について、救急科専門医の五十嵐豊先生にお話を伺いました。
熱中症による救急搬送者の約半数は65歳以上の高齢者とされており、これからの季節はとくに注意が必要です。
高齢者が熱中症になりやすい理由はいくつかあります。体温調節の機能が低下し、汗をかきにくくなることで、体内にこもった熱を外に逃せなくなるということがひとつ。また、感覚も鈍くなるため、暑さやのどの渇きを感じにくく、脱水が進んでいても本人が気づきにくいことも大きな要因です。
熱中症は屋外より住居で発生
熱中症というと炎天下の屋外を思い浮かべますが、近年では室内で発生するケースのほうが多くなっています。2023年(令和5年)の消防白書によると、熱中症による救急搬送者のうち約4割(39.9%)が自宅などの住居で発生しており、屋外での発生(29.4%)を上回っています。高齢者に限れば、住居内で発生する割合はさらに高くなると考えられます。
夏の暑さは年々厳しくなっていますが、高齢者は暑さを感じにくく、エアコンを控えたまま過ごしてしまうことが少なくありません。
さらに、高齢になると飲み込む力(嚥下機能)が衰えるため、水やお茶でむせやすくなることがあります。「むせるのがイヤだから」と水分を控えたり、トイレを気にして水分摂取を控えたりする人もいます。しかし、水分不足は脱水や熱中症のリスクを高めるため、注意が必要です。
高齢者の熱中症予防のポイント
室内では温度計や湿度計を活用し、暑さを感覚だけで判断しないことが重要です。エアコンを使用して、室温が28℃以下に保たれ、湿度は40~60%になるようにしましょう。就寝時にもエアコンを使用し、扇風機や除湿機も活用して快適な環境を心がけてください。
熱中症予防で大切なのは「のどが渇く前に飲む」ことです。とはいえ、高齢者はのどの渇きをおぼえにくいので、水分補給のタイミングを意識的につくることが大切です。
[水分補給の工夫]
・起床時、食事時、入浴前後、就寝前など、飲む時間を決める
・1日分の飲み物(1.5ℓ目安)を用意し、飲んだ量を確認できるようにする
(心臓や腎臓に病気のある方は主治医に量を確認してください)
・水分の多い果物や野菜を食事に取り入れる
・汗を多くかいたときは、塩分も補える経口補水液などを利用する

たとえば、起床時、朝食時、10時、昼食時、15時、夕食時、就寝前の7回でコップ1杯(200ml)程度、飲む。ただし、ビールなどアルコール飲料は水分補給には適さず、利尿作用で脱水して熱中症リスクを高めるので注意を。
また、誤嚥を防ぎながら水分をとるためには、飲み方にも工夫が必要です。
[むせやすい人の水分補給の工夫]
・一度に大量に飲まず、少量ずつ飲む
・ストローを使って飲む
・上を向いて飲まずに、背中を伸ばした姿勢で、あごを少し引きゆっくり飲む
・水やお茶でむせやすい場合は、とろみ剤を活用する

とろみをつけた飲料は「まずい」「飲みにくい」と感じていやがる人も。とろみの濃度の工夫や、ゼリー状の水分補給食品の活用も大切。
高齢者は自分では脱水や暑さに気づきにくいため、家族や周囲の人が「お茶を飲みましたか」「エアコンはついていますか」などと声をかけることも大切です。とくに一人暮らしの高齢者には、定期的な見守りが熱中症予防につながります。

五十嵐 豊(いがらし ゆたか)先生
日本医科大学付属病院 高度救命救急センター 講師
医学博士。日本救急医学会 救急科専門医。日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医。
日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン 2024」タスクフォースメンバー。日本蘇生協議会「蘇生ガイドライン2025」ファーストエイド タスクフォースメンバー。
また窒息事故の多い日本から、世界の窒息事故を減らすため、"MOCHI"という学会主導のプロジェクトを行っており、共同代表を務める。
制作協力:NHKエデュケーショナル




