
のどを鍛えて健康長寿に! 「のど筋トレ」のススメ
- コラム
自宅でできる「のど」のトレーニングで嚥下力と若々しい声を保とう

年齢とともに衰えてくる「のどの筋肉」。飲み込む力や声の若々しさを保ち、いつまでも食事をおいしく食べたり、楽しく会話したりしたいものです。手軽にできて、のどの筋肉を鍛えるトレーニング法を耳鼻咽喉科専門医の石井正則先生に伺いました。
年齢を重ねると、「食べ物が飲み込みにくい」「のどにつかえる感じがする」「むせやすくなった」「滑舌が悪くなった」「声が出しにくくなった」といった症状を感じることがあります。これらは一時的な不調ではなく、のどや舌の筋肉が弱くなってきているサインかもしれません。
こうした筋肉の衰えは、飲み込む力(嚥下力)や滑舌に影響するだけでなく、嗄声(させい)というしわがれ声の一因にもなります。声がかすれてうまく出ず、コミュニケーションが取りづらくなったりすることで、生活の質が落ちたり、社会への参加機会が減ってしまうことにも繋がります。 のどを意識して鍛えれば、嚥下力はもちろん、若々しい、張りのある声も保てます。
筋肉を鍛えてのどを若々しく保つ
筋肉は使わないと衰える一方です。特にのどの筋肉は、普段の生活で意識的に動かす機会が少なく、加齢とともに衰えやすい部位といえます。
日頃から、おしゃべりを楽しんだり、歌を歌ったりして、のどを意識して動かすようにしましょう。「ごっくん」と強くつばを飲み込むだけでも、のどの筋トレになります。
さらに、次のようなトレーニングを取り入れて、のどの筋肉を鍛えましょう。
◆口のトレーニング パタカラ体操
「パ」「タ」「カ」「ラ」と大きく、はっきり発音することで、舌や唇、のど周りの筋肉をバランスよく鍛えることができます。
たとえば「パ」は唇の閉じる力、「タ」は舌先の動き、「カ」はのどの奥の筋肉、「ラ」は舌を持ち上げる動作に効果的といわれています。
●「パ、タ、カ、ラ」をはっきりと5回繰り返す。

●「パ、タ、カ、ラ」を1文字ずつ4回「パ、パ、パ、パ」「タ、タ…」と繰り返す。

1日数回行いましょう。
◆のどのトレーニング 嚥下おでこ体操
額に手を当てます。手は頭を後ろに押すようにし、頭は手を押し返すように力を加えながら、おへそを覗き込むように首を曲げます。息を止めずに5秒間押し合います。これを5回繰り返す。
早めに医療機関へ相談を
「むせやすくなった」と感じたら、早めに一般の耳鼻咽喉科を受診しましょう。問題があれば大きな病院にある嚥下外来を紹介してもらえます。
のどの衰えは、加齢による筋肉の衰えだけでなく、猫背の姿勢が原因となることもあるので、日頃からよい姿勢を意識することも大切です。
また、脳梗塞やパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など重大な病気のサインの場合もあります。繰り返しむせるなど気になる症状があれば、早めに検査や診察を受けるようにしましょう。

石井正則(いしい まさのり)先生
JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長
日本耳鼻咽喉科専門医。神経耳科(めまい、耳鳴り、難聴)や自律神経の診察や検査も得意としている。ヨガの公認インストラクターでもあり、院内ヨガやストレス疾患の専門治療施設で指導。耳鼻咽喉科心身医学研究会の発起人メンバーであり、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙医学審査会委員もつとめる。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など幅広く活躍。
制作協力:NHKエデュケーショナル