
更年期の女性に多い「のどの症状」とは
- コラム
のどの違和感「咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)」と、
のどが乾く「ドライマウス」について

検査では異常が見つからない「咽喉頭異常感症」
更年期とは、閉経を挟んで前後5年の計10年間を指します。女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少によって、心身にさまざまな不調が現れやすい期間です。
更年期障害の症状は種類や程度も人によってさまざまですが、「のどに何か詰まった感じがする」「のどが締めつけられる」など、のどに違和感(咽喉頭の異常感)を覚える人も少なくありません。
「のどの違和感」がおこる原因には、炎症や甲状腺の病気、がんなど多岐にわたりますが、耳鼻咽喉科や内科で十分な検査をしても、異常や疾患が見つからない場合があります。これは「咽喉頭異常感症」とよばれ、とくに50歳代の女性に多いといわれています。
のどに球が詰まっているようで苦しいと訴える人が多いことから「ヒステリー球」とよばれることもあり、また、東洋医学では「梅核気(ばいかくき)」とよばれています。

梅の種がのどに詰まっているような感じがすることから「梅核気」とよばれることも。
咽喉頭異常感症の原因と治療法
咽喉頭異常感症の原因には、ストレスや疲労で自律神経が乱れ、のどの筋肉が過剰に緊張することや、感覚の過敏化が挙げられます。
この症状が更年期の女性に多く見られるのは、女性ホルモンの減少によって自律神経のバランスがくずれやすくなっているためだと考えられます。
治療法としては、まず休養を十分にとって生活習慣を改善するのが基本です。のどが乾燥していると違和感を悪化させるので、空気が乾燥しているときは加湿器を使ったり、マスクをつけたりしましょう。必要に応じて、漢方薬や自律神経の安定をはかる抗不安薬が使われることもあります。
耳鼻咽喉科の検査で異常がなければ、更年期が過ぎる頃には症状がなくなることがほとんどです。数カ月に一度、耳鼻科を受診してのどの状態をチェックするのもよいでしょう。
更年期以降の女性に多くみられる「ドライマウス」
加齢にともなって女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減ると、唾液腺の機能も低下し、唾液の分泌量も減ります。
唾液が出づらくなると、口が乾きやすくなり、のどの渇きにもつながります。
そのため、「異常にのどが乾く」「食べ物をうまく飲み込めない」「しゃべりづらい」といった症状が起こるドライマウス(口腔乾燥症)になったりします。
積極的な水分補給をしたり、唾液の分泌を促すよう噛みごたえのある食べ物をとったり、のどあめやガムをとったりするようにしましょう。
ただし、ドライマウスの原因は更年期だけではなく、シェーグレン症候群(唾液腺の病気)や糖尿病などの病気の症状であることも。口やのどの渇きが気になる場合は、口腔外科や内科で受診しましょう。

口の中がネバついたり、口臭が気になることも。

善方裕美(よしかた ひろみ)先生
よしかた産婦人科院長 横浜市立大学産婦人科客員准教授
医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。更年期障害についてカウンセリング、ホルモン治療、漢方薬、食事、運動、代替医療など多方面のアプローチで治療を行っている。
制作協力:NHKエデュケーショナル