のどの渇きは病気のサイン? 女性に多い膠原病(こうげんびょう)「シェーグレン症候群」とは
- コラム
ドライマウスやドライアイを伴い、更年期世代に多く発症。世界的に「シェーグレン病」に名称変更へ。

「最近、口の中がネバネバする」「のどが渇いてしゃべりにくい」――。このような症状で病気だと思うことは少ないかもしれませんが、放置は禁物。唾液や涙が出づらくなる「シェーグレン病(シェーグレン症候群)」が原因かもしれません。筑波大学名誉教授で、リウマチ専門医の住田孝之先生にお話を伺いました。
シェーグレン病は、体の免疫が自分の細胞を攻撃してしまう「自己免疫疾患」のひとつです。40〜60代の女性に多く、日本では少なくとも7万人以上の患者がいるといわれています。単独で発症することもありますが、関節リウマチなど他の膠原病(こうげんびょう)と合併することもあります。
「ドライマウス」と「ドライアイ」が主な初期症状
唾液や涙をつくる腺(唾液腺・涙腺)に炎症が起きるため、口や目が乾く「ドライマウス」と「ドライアイ」が代表的な初期症状です。ドライマウスになると、口が渇いて会話を続けられなかったり、食事中によく水分をとったりするようになります。虫歯になりやすく、口角に炎症ができたりもします。ドライアイは、目の疲れや充血、ゴロゴロとした異物感、悲しくても涙が出ないといった訴えがよく聞かれます。また、寒さや冷たい水などで指先が青白くなる「レイノー現象」なども初期症状として多く見られます。
関節痛や倦怠感、発熱、皮疹(ひしん)などの症状を伴うこともあり、人によって症状や程度もさまざま。日常生活に支障をきたす人も少なくありません。
また、リンパ節が腫れたり、腎臓や肺、神経に炎症が広がったりすると、ときには命に関わることも。長期にわたる治療が必要で、国の指定難病のひとつです。

初期症状はドライマウスやドライアイ、レイノー現象などが多く見られる。
リウマチ科や膠原病内科などの専門医を受診
ドライマウスやドライアイの症状が長引いたり、日常生活に支障があったりする場合は、症状に応じて、耳鼻咽喉科や口腔外科、歯科、眼科などを受診しましょう。必要に応じてリウマチ科や膠原病内科などの専門医を紹介してもらいます。
診断には、血液検査や涙、唾液の分泌量を調べる検査が行われます。
根本的に治す治療法はまだないため、症状をやわらげる対症療法が中心です。
ドライマウスには唾液分泌を促す薬や保湿ジェル、人工唾液で口腔内を潤します。ドライアイには1日数回目薬を点眼し、症状が重い場合は、涙点プラグという眼科での治療で涙の蒸発を防ぎます。全身症状が強い場合は、ステロイドや免疫抑制薬で炎症を抑えます。

シェーグレン病の確定診断は、専門医の受診が必要。
周囲の理解や生活の工夫も大切
シェーグレン病は、外から見ても症状がわかりにくく、周りの人に理解されにくい病気です。病名がわかるまでに時間がかかることもあります。診断されたあとも、耳鼻咽喉科や眼科、皮膚科、歯科など、いくつかの診療科で治療を受けるため、診療科の連携も大切になります。
ただし、新しい治療法も開発されつつあり、早期発見と適切なケアで生活の質を保てる病気です。規則正しい生活やバランスのとれた食事、休養をとり、周囲の協力も得ながら、ストレスを避ける生活を送ることがポイントとなります。
この疾患は「シェーングレン症候群」として知られてきましたが、病気の発症メカニズムが明らかになってきたこともあり、患者の声や国際的な合意によって、世界的に「シェーグレン病」と名称変更されつつあります。病気の理解がさらに深まることが期待されています。
のどの症状が強い場合は、他の病気にも注意
シェーグレン病は、唾液の分泌が減ることで「のどの乾き」「声のかすれ」「食べ物が飲み込みにくい」といった症状が出やすくなります。
ただし、のどの違和感や痛み、飲み込みにくさが強い場合は、シェーグレン病だけでなく、ほかの病気の可能性も考えられます。たとえば、甲状腺の病気、胃酸の逆流(逆流性食道炎)、咽頭や喉頭の炎症、さらには腫瘍性の病変などでも似た症状が起こります。
のどの不調が続くときは、「乾燥のせい」などと決めつけず、必要に応じて耳鼻咽喉科や膠原病内科などを受診し、原因を確認するようにしてください。

住田孝之(すみだ たかゆき)先生
筑波大学 名誉教授
日本リウマチ学会専門医、リウマチ指導医、日本内科学会認定医。日本シェーグレン症候群学会(現 日本シェーグレン病学会)で2009~2014年に理事長を務め、現在は顧問。日本リウマチ学会 名誉会員。
制作協力:NHKエデュケーショナル




