三大夏かぜのひとつ「ヘルパンギーナ」とは?

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子どもだけでなく、大人も要注意!
口腔内に痛い発疹があらわれるウイルス性咽頭炎

かぜは、寒い時期だけでなく、暑い夏にもかかることがあります。それはインフルエンザウイルスのように低温低湿の環境を好むウイルスがいる一方で、高温多湿時に活発になるウイルスがいるからです。 その代表のひとつが7月にピークとなる「ヘルパンギーナ」です。今回はそのヘルパンギーナについて、JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長の石井先生に伺いました。

のどに水泡ができて痛む「ヘルパンギーナ」

ヘルパンギーナは、コクサッキーウイルスというウイルスによって引き起こされる急性のウイルス性咽頭炎です。 「プール熱(咽頭結膜熱)」「手足口病」とともに三大夏かぜのひとつとされ、乳幼児を中心に夏に流行します。
ヘルパンギーナの主な症状は、突然38度以上の高熱が続くこと、口の中やのどの奥に小さな水泡がいくつも現れ、赤く腫れ、水包は破れると口内炎がたくさんおこります。飲食するときにしみて、のどに強い痛みが出るため、食事や水分が取りづらくなります。 一方、手足口病もウイルス性の感染症で、発疹が口腔内だけでなく手のひら、足の裏などにあらわれます。手足口病では3割程度に発熱がありますが、軽度なことがほとんどです。




主な症状 ヘルパンギーナ 手足口病
発熱 突然38℃以上の高熱が続く 3割程度に発熱がみられる(軽度)
発疹 口の中やのどの奥に水泡があらわれる
赤く腫れ、口内炎が多数発生
口の中、手のひら、足の裏などにあらわれる

どちらも子どもに多い感染症ですが、大人がかかると症状が重く出やすいといわれています。寝不足や疲労がたまって免疫力が低下していると、感染しやすくなるので注意が必要です。




水分補給を心がける

のどの痛みで食事や水分がとりにくくなるため、水分補給を充分心がけ、脱水症状にならないように注意してください。また、発疹や口内炎のため、酸っぱいものや塩辛いものはとくに痛むので、食事はのどごしがよく、薄味のものを用意しましょう。プリンやシャーベット、冷製スープや冷奴、ゼリーなどもおすすめです。
残念ながら、ヘルパンギーナや手足口病には特効薬がないため、症状に応じた対処療法を行いながら様子をみます。発熱が強く、食欲が低下して体調がすぐれない場合には解熱剤の使用を検討しましょう。通常は2〜4日程度で熱が下がり、1週間程度で治癒します。
治療を始めてから3、4日程度たっても症状が治まらない場合や、頭痛や嘔吐が続く場合は、医師に相談してください。

感染に注意して看病を

ウイルス性の病気は基本的には飛沫感染や経口感染、接触感染でかかるので、予防が第一。
お子さまがヘルパンギーナにかかった場合、看病するときはマスクを着用して接し、手洗いとうがいをこまめにしっかりと行うようにしてください。タオルや箸などは共有しないようにしましょう。とくに乳幼児は、体の不調を正確に伝えられないケースがほとんどで、普段よりも機嫌が悪い、よだれが多い、食べない、飲まないなど変わったようすがみられるときは、早めに受診をして診断を受けることにより、感染の拡がりを抑えることにつながります。
また、症状が治まったあとも便にはコクサッキーウイルスが2〜4週間ほど出ていますので、トイレのあとやおむつ交換の際にも注意が必要です。

(2023.7.5掲載)

教えてもらった先生:石井正則(いしい まさのり)先生

JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長
日本耳鼻咽喉科専門医。神経耳科(めまい、耳鳴り、難聴)や自律神経の診察や検査も得意としている。ヨガの公認インストラクターでもありストレス疾患の専門治療施設やヨガスタジオで指導。耳鼻咽喉科心身医学研究会の発起人メンバーであり、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙医学審査会委員もつとめる。
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など幅広く活躍。

制作協力:NHKエデュケーショナル

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