子どもに多い「のど(喉)の病気」

  • 喉の症状
特集記事
この記事をシェアする
FacebookTwitterLINE

「のどが痛い」と子どもが訴えたら?
知っておきたい子どもがかかりやすい感染症
溶連菌(ようれんきん)感染症・アデノウイルス感染症・プール熱

春先に増える「溶連菌感染症」は、学童期の子どもがもっともかかりやすいといわれる感染力の強い病気。
新学期を迎えるにあたって気をつけたい、のどの病気について、JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長の石井先生に伺いました。

ただの風邪とは違う「溶連菌感染症」とは?

発熱やのどの痛みなど、風邪の症状と似ていますが、「溶連菌感染症」は細菌性の病気です。
溶連菌は正式には「溶血性連鎖球菌」という細菌で、なかでもA群の溶連菌による感染症が多く、3歳から15歳くらいまでの子どもが感染しやすいといわれています。
このA群溶連菌感染によく見られる症状が、強いのどの痛みです。また、顔や体や手足に小さな赤い発疹がたくさん出たり、舌が真っ赤になってプツプツとした発疹(イチゴ舌と呼ばれる)や喉に赤い点などの症状が見られたりします。これらの所見は新型コロナ感染症との大きな違いです。さらに、風邪と違って、咳や鼻水が出ないというのもこの病気の特徴です。

迅速診断キットで検査を

受診して溶連菌感染の疑いがあれば、迅速診断キットで検査を行うことで、結果もすぐわかります。なるべく早く医療施設を受診し、早期に治療すると溶連菌が除菌され、解熱も起こり、以下に述べる続発症にかかりにくくなります。
溶連菌感染症には主にペニシリン系の抗菌薬を服用します。2、3日で熱が下がり、のどの痛みもやわらぎますが、症状が消えても抗菌薬はしばらく服用する必要があります。確実に治しておかないと、リウマチ熱や急性糸球体腎炎(きゅうせいしきゅうたいじんえん)といった重大な続発症につながることがあるのです。

プールでの感染が多い「アデノウイルス」

アデノウイルスによる感染症にはさまざまな種類がありますが、とくに学童期の子どもがかかりやすいのが咽頭結膜熱です。多くはプールの水を介して感染するため、プール熱とも呼ばれています。
よく見られる症状は、発熱とのどの痛み、結膜炎です。38℃以上の高熱が数日続くことが多く、口蓋垂(のどちんこのこと)の周囲に大きな口内炎のようなものが多発し、のど全体が赤くなって咽頭痛が強くなります(ヘルパンギーナと言います)。溶連菌の症状とよく似ていますが、残念ながらアデノウイルスに効果のある抗ウイルス薬はありません。対症療法を行いながら自然によくなるのを待つことになります。多くは数日のうちに快方に向かうので、脱水症状に気をつけて様子を見ます。

のどの痛みが強く食事が取れないときには、シャーベットやゼリー、茶わん蒸しなど、のどごしが良いものを摂るようにしましょう。発熱が強く、食欲が低下し、体調がすぐれない場合には、解熱剤の使用を検討しましょう。症状として下痢が出ることもありますが、無理に下痢止めを使うと、排出されようとしていたウイルスが体内に残ってしまうため、使いすぎないように注意が必要です。
また、涙、鼻水や唾液だけでなく、便にもアデノウイルスは生きて入っているため、家庭内での感染を広げないために汚物の処理をしたあとは手洗いを徹底してください。
治療を始めてから3~4日程度経過しても症状が治まらない場合には、医療機関を再度受診するようにしてください。

先ほど述べたようにアデノウイルスの感染症は飛沫感染や接触感染で広がりますが、溶連菌感染症も同じように飛沫感染や接触感染でうつります。新型コロナの対策で、これらの感染症は激減しました。しかしながら、「溶連菌感染症」や「アデノウイルス」のどちらも感染力の強い病気です。学校教育の現場でも新学期となる4月1日からマスクの着用が緩和されますが、新型コロナと同じように、手洗い・うがいといった基本的な感染症対策は忘れずに続けるようにしましょう。

(2023.3.23掲載)

教えてもらった先生:石井正則(いしい まさのり)先生

JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長
日本耳鼻咽喉科専門医。神経耳科(めまい、耳鳴り、難聴)や自律神経の診察や検査も得意としている。ヨガの公認インストラクターでもありストレス疾患の専門治療施設やヨガスタジオで指導。耳鼻咽喉科心身医学研究会の発起人メンバーであり、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙医学審査会委員もつとめる。
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など幅広く活躍。

制作協力:NHKエデュケーショナル

この記事をシェアする
FacebookTwitterLINE