のど(喉)の違和感 知っておきたい病気のサイン

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かぜかな? と見過ごさずに知っておきたい病気のサイン
「扁桃炎」ってどんな病気?

初期の症状が、かぜをひいた時ののどの痛みに似ていて、ひどくなるまで気づきにくい「扁桃炎(へんとうえん)」。これが慢性炎まで進行すると、肋骨や胸骨などの骨に痛みが出たり、腎臓病になったりしてしまうこともあるのでくれぐれも気をつけてください

かぜをきっかけに誰でもかかりうる病気

のどには、「扁桃(へんとう)」と呼ばれるリンパの組織があって、細菌やウイルスの侵入を防ぐ免疫機能を担っています。自分でも鏡の前で口を開けると確認できるのが扁桃腺と呼ばれてきた「口蓋扁桃(こうがいへんとう)」で、舌の付け根の両側にあるアーモンドのような形をしたものです。

かぜや疲れ、ストレス、気温の急激な変化、のどの乾燥などによって、扁桃にウイルスや細菌がつくと炎症を起こします。その状態が「扁桃炎」です。一般的には、「急性扁桃炎」といって40℃近い熱が出て、口にしたものがのみ込みづらいといった症状を伴います。
適切な治療をせずに重症化させると、扁桃の周りに炎症が拡大して食事が取れなくなったり、膿までもが扁桃の外に溜まったりして、手術が必要になることもあります。はじめのうちは、かぜとよく似た症状のため、自分で勝手に判断して放置しがちになるので注意が必要です。
急性扁桃炎を繰り返すと、「慢性扁桃炎」になる場合があります。急性扁桃炎のような高熱やのどの痛みは少ないのですが、のどの違和感や乾燥する感じ、ひりひり感といった症状のほか、におい玉(膿栓)が溜まって、口臭が気になるなどの症状が特徴です。

水分不足と栄養不足に気をつけよう

扁桃炎を予防するには、コロナ対策と同様にうがいと手洗いが大切です。こまめにうがいし、病原菌の侵入を防ぎましょう。扁桃の腫れは、のどの乾燥も関係するので、気づいたときに、のど飴をなめたりしてのどを潤すことが重要です。
また、疲労やストレスをためると免疫力が低下し、扁桃にウイルスが増殖しやすくなってしまいます。睡眠と栄養と休息も心がけ、自律神経の働きを安定させるようにしましょう。

扁桃の膿(うみ)が口臭の原因に

先ほども述べましたが、慢性的に扁桃が炎症を起こしていると、扁桃の表面などに膿がたまりやすくなります。ポツポツとした白い塊で、「膿栓(のうせん)」といい、口臭の原因になります。これを俗に「におい玉」と言ったりします。綿棒や指で触って自分で取り除こうとすると、周辺の組織に傷をつけたり、細菌やウイルスが侵入しやすくなったりして、膿栓を悪化させることがあります。耳鼻咽喉科で受診をして、治療をするようにしましょう。
膿栓由来の口臭は、膿栓をとることで軽くすることはできますが、慢性扁桃炎の状態をよくすることが大切です。

慢性扁桃炎は重篤な病気を引き起こすことも

扁桃炎を繰り返す慢性扁桃炎で注意したいのが、扁桃が原因でほかの病気をひき起こす場合があることです。扁桃の炎症が全身に広がると、骨に痛みが出るなど、さまざまな臓器に障害が起こることがあります。これを「扁桃病巣感染症」といいます。
また代表的な病気としては、IgA腎症などの腎臓疾患、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、乾癬(かんせん)などの皮膚疾患、胸肋鎖骨過形成症などの骨関節疾患があげられます。これらの病気は、炎症の元となっている扁桃摘出手術によって症状に改善がみられます。
そのほか、年に2~3回以上の扁桃炎の炎症を繰り返したり、「扁桃周囲炎」や「扁桃周囲膿瘍」という重症の炎症を起こしたりした場合は、手術が勧められます。

(2022.11.21 掲載)

教えてもらった先生:石井正則(いしい まさのり)先生

JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長
日本耳鼻咽喉科専門医。神経耳科(めまい、耳鳴り、難聴)や自律神経の診察や検査も得意としている。ヨガの公認インストラクターでもありストレス疾患の専門治療施設やヨガスタジオで指導。耳鼻咽喉科心身医学研究会の発起人メンバーであり、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙医学審査会委員もつとめる。
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など幅広く活躍。

制作協力:NHKエデュケーショナル

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