のどの痛みや違和感…注意すべき症状とは

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こんなときは緊急対応を! のどの危険なサインについて

のどが痛いという症状は、チクチクするといった違和感やつばを飲むと痛い、引きつれるような激しい痛みなど、さまざまです。なかでも注意したい痛みや違和感はどんなものか、耳鼻咽喉科専門医の石井正則先生にお伺いしました。

のどには、空気や食べ物の通り道である「咽頭」(いんとう)と、空気だけが通る「喉頭」(こうとう)というふたつの通り道があります。のどが痛いときは、この咽頭や喉頭の粘膜や扁桃というリンパ組織に炎症が起きていることがほとんどです。
炎症を起こす原因はさまざまですが、主に風邪やインフルエンザなどのウイルス感染、溶連菌などの細菌感染、アレルギー、空気の乾燥、タバコの煙、声の酷使などがあげられます。

呼吸が苦しいときは早急に医療機関へ

のどの痛み以外に、つばを飲み込めない、口が開かない、息苦しいといった症状があったら、咽頭や喉頭を含む気道が狭くなっているサインかもしれません。のどは空気の通り道なので、気道閉塞を起こすと窒息する危険があります。呼吸が苦しいときは、救急の受診が必要です。

【緊急に受診や処置が必要な病気と症状】

扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)

急性扁桃炎が悪化して、扁桃の周囲に炎症がおよび、さらに膿がたまった状態。激しいのどの痛みで(片側に強く出やすい)唾液や水を飲み込めなかったり、口を開きにくくなったりします。38度以上の高熱やこもった声、口臭を伴います。ときに耳の奥の痛みも伴うことがあります。

扁桃だけでなく、周囲も赤く、大きく腫れる。切開して膿を出す処置をする。

急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)

喉頭蓋が腫れて気道が狭くなります。突然起こる激しいのどの痛みがあり、呼吸困難になったり、ひどくなると呼吸がヒューヒューとした喘鳴(ぜんめい)になったりします。人によっては唾液を飲み込めず、よだれが出ることもあります。急激に呼吸困難になる可能性があり、その場合は緊急入院となります。ステロイド剤の点滴による大量投与や抗生剤の点滴が必要になります。

喉頭蓋が強く腫れて窒息の恐れがあるときは、緊急気管切開する必要も。

●咽後膿瘍(いんごのうよう)

飲み込みにくさや飲み込むときの痛み、首の痛み、発熱、呼吸困難が見られます。感染が進行しやすく、気道閉塞や敗血症性ショックなど重篤な症状を引き起こすことがあります。主に1~8歳の子どもが発症しますが、まれに大人でも魚の骨などが刺さってのどが傷つくことなどで発症します。

●レミエール症候群(化膿性血栓性静脈炎)

とてもまれな疾患ですが、強い咽頭痛の数日後に高熱が出て、頸動脈の痛みや腫れ、肺などに膿瘍ができます。肺の血管に血栓ができると呼吸困難や胸痛を伴い、ときには命にも関わります。

長引くのどの痛みに要注意

軽度の咽頭炎や扁桃炎は、通常、数日で緩和し、回復に向かいます。もし、1週間以上痛みが続く場合や痛みが強まる場合は、溶連菌感染症やマイコプラズマ肺炎など細菌性の感染症、咽頭や喉頭のがんが原因であることも考えられます。自己判断せずに、耳鼻咽喉科で受診しましょう。
また、逆流性食道炎や狭心症などの病気が、のどの痛みの原因になっていることもあります。これらはのど以外の症状を伴うことが多いので、早めに専門医に相談することが重要です。

(2025.6.6掲載)
石井正則先生

石井正則(いしい まさのり)先生

JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長
日本耳鼻咽喉科専門医。神経耳科(めまい、耳鳴り、難聴)や自律神経の診察や検査も得意としている。ヨガの公認インストラクターでもありストレス疾患の専門治療施設やヨガスタジオで指導。耳鼻咽喉科心身医学研究会の発起人メンバーであり、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙医学審査会委員もつとめる。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など幅広く活躍。

制作協力:NHKエデュケーショナル

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