
長引く咳に要注意! 病気を知らせるサインの場合も
- コラム
激しい咳が続く「百日咳(ひゃくにちせき)」の流行にも気をつけて

激しい咳が数週間続く感染症「百日咳」が、流行しています。とくに乳児は重症化しやすいので注意が必要です。また、長引く咳には重い病気が隠れていることも。注意したい咳について、呼吸器内科医の皿谷健先生に聞きました。
咳はどうして出るの?
ほこりやウイルス、煙などの異物が鼻やのど、気管に入ってくると、体はそれを外に出そうとします。異物の刺激が神経から脳に伝わり、「咳を出すように」と指令が出て咳が出るのです。
これは体を守るための防御反応です。専門的には「咳反射」と呼ばれ、自動的に起こります。また、痰などを出すために、咳払いのように意識的に咳を出すこともあります。
痰(たん)のある咳と乾いた咳
痰があるかないかで、咳は二つに分かれます。咳の種類によって、原因も違ってきます。
●痰を伴う咳
湿性咳嗽(しっせいがいそう)といって、痰や鼻汁を体外に出そうするため「ゼロゼロ」「ゴホゴホ」という湿った咳になります。鼻やのどに炎症があるときに出る咳で、副鼻腔炎や気管支の病気が考えられます。
●痰が出ない、あるいは痰が少ない咳
乾性咳嗽(かんせいがいそう)といい、「コンコン」「ケンケン」といった乾いた咳が出るのが特長です。そのひとつであるアトピー咳嗽は、花粉や黄砂、ハウスダストなどに対するアレルギー反応で起こり、のどのイガイガや痒みなどを感じることが多いでしょう。また、気道や肺に炎症があるとき、咳喘息、胃食道逆流性などでも症状が見られます。
長引く咳には要注意
風邪の咳は、のどの痛みや鼻水が治まったあとも、気道がまだ敏感なため、2~3週間続くことがあります。 ただし、咳が長く続いたり、ひどくなったりした場合は、風邪以外の病気の可能性があります。咳が出る病気としては、咳喘息、喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、胃食道逆流症、アトピー咳嗽、慢性気管支炎などがあり、これらは自然に治ることは難しいため、治療が必要です。また、副鼻腔炎が長引いて気管支に炎症を起こし、痰のからむ咳になることもあります。 このような場合、咳止めで症状を治めようとしても、根本的な解決にはなりません。 3週間以上咳が続いたり、短期間でも息苦しさや高熱があったりするときは、重い病気が隠れていることもあるので、早めに医療機関を受診し、呼吸器の専門医に相談しましょう。
●咳が続く期間と原因について
咳が長引くにつれ、感染症以外の病気が原因である可能性が高くなります。

皿谷医師作成
百日咳にも注意
子どもを中心に流行中の「百日咳」は、その名の通り咳が長引くことや、けいれん性の激しい咳発作や咳き込み後の嘔吐などが特徴の細菌性の感染症です。大人は比較的軽症で済みますが、乳幼児が感染すると重症化するリスクが高い病気ですから、早めに検査して発症からなるべく早期に治療し、周囲への感染予防のため百日咳菌の排出を認める3週以内なら治療を考慮することが大切です。一般的にはマクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン等)が第一選択薬となりますが、我が国で見られる百日咳菌もマクロライド耐性株の報告が増加しており注意が必要です。
感染力はインフルエンザやおたふく風邪よりもずっと強いため、0歳児と1歳児の予防接種は必ず行いましょう。なお、百日咳ワクチンの効果は4~12年で弱まってくることがわかってきています。乳幼児の兄弟が家庭にいる小・中学生や、呼吸器疾患のある人は、感染予防のためにワクチンの任意接種を検討してもいいでしょう。

乳幼児の兄弟がいる小・中学生や、呼吸器疾患のある人はワクチンの任意接種の検討を。

皿谷健(さらや たけし)先生
杏林大学 呼吸器内科 教授
日本マイコプラズマ学会理事、日本感染症学会感染症専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本内科学会総合内科専門医
聴診を含めた身体所見、胸水診断や間質性肺炎、マイコプラズマ肺炎の研究を行う。漢方診療も行っている。
制作協力:NHKエデュケーショナル