そのゲップ 呑気症(どんきしょう)かも
- コラム
原因はストレス? 空気がおなかにたまる症状「呑気症」について
頻繁にゲップが出たり、夕方になるとおなかが張ったり、急におならが出そうになったり……。そんな困った経験が、ずっと続いているなら、「呑気症」かもしれません。消化器内科医の鈴木秀和先生に話を伺いました。
ゲップは、胃や食道の空気が口へと逆流することで起こる生理現象です。私たちは飲食の際に、一緒に空気も飲み込んでいます。ちなみに、炭酸水を飲むと、大きなゲップが出やすいのは、飲み込まれた空気が炭酸ガスと一緒になって出てくるためです。
また、胃に入った空気は一部が腸に流れて、ガスと一緒に最終的にはおならとして体外に出ます。
普段から、ゲップやおならが多かったり、膨満感が気になるという人は、無意識に空気を飲み込みすぎて、胃や食道、腸に空気がたまりやすい「呑気症(空気嚥下症)」かもしれません。
会話中にゲップが出て困ることが増えたら「呑気症」かも
呑気症の原因はストレスや歯の‘噛みしめ’
呑気症の原因としてよく指摘されているのが、ストレスです。緊張したり、不安感が高まったりすると、無意識のうちに唾液とともに空気を飲むことが多くなるからです。またストレスを感じると、無意識に歯をグッと噛みしめることも増えますが、この歯の噛みしめも空気を多く飲み込む原因になります。
通常、上下の歯はくっついておらず、数ミリ離れていますが、歯(とくに奥歯)を噛みしめると、舌が上あごについて、唾液がのどに流れ込みやすくなります。そのとき、空気も一緒に飲み込むことが多くなるというわけです。
日常的にしている無意識の歯の噛みしめによる呑気症の場合、胃腸の不快感のほかにも顎関節の痛みや頭痛、めまいを伴うことがあり、「噛みしめ・呑気症候群」と分けて呼ぶこともあります。
そのほか、口呼吸や早食いも飲み込む空気の量が多くなりがちです。
イライラしたり、つらい気持ちを我慢すると無意識に奥歯を噛みしめやすい
重い病気が隠れている場合も
呑気症は空気が原因なので、整腸剤などを飲んでも効き目がないことがほとんどです。ストレスの多い生活を見直し、早食いなどの習慣を改めてみましょう。正しい姿勢で、よく噛んで、ゆっくり食べることを意識したり、かみしめ癖がないか注意してみましょう。場合によってはマウスピースも有効です。
ただし、ゲップや膨満感といった症状は、胃の働きに問題がある機能性ディスペシア(胃の痛みや胃もたれなどの症状が続いているにもかかわらず、内視鏡検査などを行っても異常がみつからない病気)や、胃酸が食道に逆流して炎症を起こす逆流性食道炎、さらには、便秘や腸の運動が低下した状態が原因になっていることもあります。
まずは、内科・消化器内科で胃腸に問題がないか調べたうえで、緊張や不安感による不調を感じている場合は心療内科、歯の食いしばりや歯ぎしりに思い当たる場合は歯科を受診するようにしましょう。
教えてもらった先生:鈴木秀和先生
東海大学病院本部本部長補佐・東海大学医学部内科学系消化器内科学教授。慶應義塾大学医学部卒。カリフォルニア大学サンディエゴ校研究員、北里研究所病院消化器科医長、慶應義塾大学医学部准教授(消化器内科)、教授(医学教育統轄センター)、専修医研修センター長等を経て現職。 慶應義塾大学医学部内科学客員教授、東京歯科大学内科学客員教授、日本神経消化器病学会副理事長、日本消化管学会理事、Rome委員会委員も務める。