これって病気? 手術が必要? 扁桃肥大

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小学校低学年時に指摘されやすい扁桃肥大。経過観察でよい場合、手術を検討する場合

小学校の健診で、「扁桃肥大」と記された結果をお子さまがもらって、心配する保護者の方は少なくありません。大きい扁桃は取ったほうがいいのか、治療や手術が必要なのかなど、石井正則先生に伺いました。

扁桃はのどにあるリンパ組織で、口から入ってくるウイルスや細菌などの侵入を防ぐ働きをしています。口蓋垂(こうがいすい、のどちんこのこと)の左右にある扁桃腺は、医学的には「口蓋扁桃」といい、そのほかにも、鼻の奥にある「アデノイド(咽頭扁桃、いんとうへんとう)」、「舌扁桃(ぜつへんとう)」、「耳管扁桃(じかんへんとう)」といった扁桃組織があります。
扁桃肥大とは、口蓋扁桃が肥大する状態です。個人差はありますが、口蓋扁桃は、通常3歳頃から大きくなり、小学校低学年の6~7歳頃にピークとなります。そのため、小学校の健診で指摘されて気づくことがあります。肥大は程度によって4段階に分けられ、幼児の場合、+1~+2度の肥大程度は生理的現象とされています。大きくなった口蓋扁桃は、その後は小さくなっていくのが通常です。

肥大の程度

*「ブロードスキー分類」 +3〜+4を病的な扁桃肥大としている

扁桃肥大だと、どんな症状がある?

軽度の肥大では、とくに症状はありませんが、口蓋扁桃が大きくなりすぎると、いびきがひどくなったり、口呼吸になったり、就寝時に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群を引き起こしたりすることがあります。また、食べ物がスムーズにのどを通らないため、食が細くなったり、食べるのが遅くなったりすることもあります。
子どもの場合、扁桃肥大があれば、アデノイドも肥大している可能性があります。やはり個人差はありますが、アデノイドも口蓋扁桃と同様に小児の時期に大きくなり、小学校の低学年をピークに最も大きくなります。アデノイド肥大があると、鼻の奥が詰まった状態になるため、鼻づまりや鼻声が続いたり、扁桃肥大と同じように口呼吸をしたりするようになります。口臭やいびき、睡眠時無呼吸などの症状、日中の強い眠気による居眠りや集中力の低下も見られます。

*口呼吸で集中力が低下することも

まずは受診して検査を

耳鼻咽喉科を受診すると、視診やレントゲンで肥大の具合を確認します。レントゲンを撮るのが難しい幼児の場合は、必要に応じて内視鏡を鼻から入れるファイバースコープ検査をします。
幼児や学童期に扁桃やアデノイドが肥大化するのは、成長に伴って大きくなる生理的肥大がほとんどです。軽度であれば経過観察のみを行い、自然に小さくなるのを待ちます。ただ、呼吸障害や睡眠障害への影響が大きい場合、成長障害を併発することが最近わかってきたこともあり、摘出手術を積極的に検討します。

自然には治らない大人の扁桃肥大

生理的肥大以外に、慢性扁桃炎を繰り返したことによる病的肥大もあります。もともと子どもの頃に肥大していたのが、大人になっても小さくならなかったり、炎症を繰り返すことでより肥大化し、症状があらわれるようになったりすることが多いようです。肥満によって、首周りに脂肪がたまり、扁桃が内側に押し出されてのどをふさぐようになることもあります。これらの場合は自然に小さくなることはありません。とくに、溶連菌感染などで扁桃炎を繰り返すことで腎障害を起こしている場合や、呼吸障害や嚥下障害、睡眠時無呼吸症候群などがあったりする場合は、耳鼻咽喉科医師と相談のうえ、摘出手術を検討します。

(2024.7.26掲載)

教えてもらった先生:石井正則(いしい まさのり)先生

JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長
日本耳鼻咽喉科専門医。神経耳科(めまい、耳鳴り、難聴)や自律神経の診察や検査も得意としている。ヨガの公認インストラクターでもありストレス疾患の専門治療施設やヨガスタジオで指導。耳鼻咽喉科心身医学研究会の発起人メンバーであり、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙医学審査会委員もつとめる。 テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など幅広く活躍。

制作協力:NHKエデュケーショナル

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