そのいびき、危険な兆候?

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のどいびきに注意! いびきと閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)

睡眠の質を下げるだけでなく、同室で寝ている人にも迷惑ないびき。どうしていびきをかくのか、メカニズムと原因について、また病気の兆候である危険な いびきについて、赤星俊樹先生にお話を伺いました。

いびきには2種類ある

いびきは寝ているとき、のどの空気の通り道である気道が狭くなるため起こります。狭くなった気道を空気が通過する際に、のどにある軟口蓋や口蓋垂(のどちんこ)などが震えて出す振動音や摩擦音が、いびきです。
睡眠中は、のどの筋肉がゆるみやすくなって気道が狭くなるため、いびきが出やすくなります。このいびき音は、あおむけになると大きくなります。
また、気道が狭くなる原因が鼻の場合は「鼻いびき」、舌やのどにある場合は「口いびき」といわれることもあります。口は閉じて寝ているのにいびきをかく、というケースは「鼻いびき」の可能性が高いでしょう。

正常な状態

気道が狭い状態

いびきの原因

いびきをかく原因はさまざまです。風邪や花粉症などによる鼻詰まり、飲酒や疲れなどが原因で一時的にいびきをかく場合は、おおむね心配ありません。
ただし、習慣的にいびきをかく場合は、閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)や口蓋扁桃の肥大、咽喉頭部の腫瘍、甲状腺機能低下症などの疾患が隠れているなどの疾患が隠れている可能性があります。原因によっては、身体に大きな負担をかけ、健康へのリスクが高まることがあるので注意が必要です。

[主な原因]

●口呼吸
睡眠中に口呼吸をしていると、口が開いて下あごが後方へ移動します。舌の根元がのどの奥に落ち込みやすくなると、気道がより狭くなりやすいのです。さらに鼻呼吸よりも吸い込む空気が多いので、いびきも目立ちやすくなり、この場合に「口いびき」となると考えられます。起床時に口が乾いている人は、口呼吸の可能性が考えられます。

●鼻炎
花粉症やアレルギー性鼻炎などで鼻が詰まって、空気の通りが悪くなっている場合に「鼻いびき」となると考えられます。鼻詰まりのときには、空気を多くとりこもうとするため、口呼吸もしやすくなります。

●飲酒や疲れ
飲酒をしたり、疲れがあったりすると、舌やのどの筋肉がゆるみ、舌の根元が落ち込みやすくなります。とくに飲酒では、鼻も詰まりやすくなるので、鼻炎のときと同じように口呼吸をしやすくなるようです。

●肥満
身体への脂肪のつき方は異なりますが、とくに首周りへの脂肪がつくと(二重あごになるなど)気道がより狭くなりやすくなります。

●下あごの形態
下あごが小さく、後ろに移動していると、とくに気道は狭くなりやすいのです。下あごが後ろへ移動しているかは、唇を少し離して上と下の前歯の位置を確認すると見つけやすいでしょう。下の前歯が上の前歯に比べて、噛み合わせが気になるほど後ろにあると、下あごが後ろへ移動しているかどうか簡単に見つけられるかもしれません。

●加齢
年齢とともに舌やのどの筋肉が衰え、舌の根元が落ち込みやすくなります。さらに、のどの構造や呼吸の状態に変化が起きてきて、のどの気道が開きづらくなったりすることがいわれています。

●服用している薬
筋弛緩薬、睡眠薬、精神安定剤などを飲んで寝ると、人によって違いはありますが、舌や咽頭の筋肉の緊張がなくなり気道が狭くなりいびきの発生につながります。

とくに危険な閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)に注意

のどの空気の通り道である気道が閉塞してしまうと、呼吸が止まってしまう無呼吸が起こります。この一時的な無呼吸が睡眠中に何度も繰り返されるのが閉塞性睡眠時無呼吸症です。塞がった気道に空気をなんとか通そうと呼吸を再開する際に、いびきと脳で小さな覚醒が生じやすくなるのです。
無呼吸で酸素欠乏となってしまうと、これが蓄積されて高血圧や心筋梗塞、心不全、脳卒中を招きやすくなります。一方、睡眠不足によるストレスは、朝、目覚めたときに感じる「睡眠の休養感」をなくしてしまい、体重増加や糖尿病なども招きやすくなるといわれています。
昔いわれた、いびきは「良く寝ている証」ではなく、身体への負担だと現在では理解されています。原因に、とくに危険とされる閉塞性睡眠時無呼吸症の可能性もあることでしょう。家族からいびきが大きいと指摘されたり、熟睡感や睡眠の休養感が得られていなかったり、眠気を日常的に感じるなどの場合は、専門の医療機関で検査を受けることが非常に大切です。

(2024.4.26掲載)

教えてもらった先生:赤星 俊樹(あかほし としき)先生

医療法人社団 慶真記念会理事長 新宿/有楽町 睡眠・呼吸器内科クリニック
日本大学医学部呼吸器内科学分野 臨床准教授 医学博士
米国ボストン ハーバード大学医学部に留学。
認定資格 日本睡眠学会専門医・指導医、日本呼吸器学会専門医・指導医、
日本アレルギー学会専門医など。
睡眠呼吸障害の診断と治療に早くから携わり、現在は専門医療施設における 運営にも従事している。

制作協力:NHKエデュケーショナル

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