子どもの誤飲や窒息事故を防ぐ
- コラム
乳幼児に多い危険な事故
知っておきたい窒息や誤嚥につながる食べものと原因
食べものやおもちゃをのどに詰まらせる「窒息」や、電池やタバコなど危険なものを口にしてしまう「誤飲」などは、短時間のうちに命に関わってしまう恐ろしい事故です。ミニトマトやブドウなども4歳以下の子どもにとっては危険なことも。事故を防ぐためのポイントを五十嵐豊先生に伺いました。
丸くてツルッとしている食品に注意
幼いお子さんの食事は、つねに窒息の危険と隣り合わせにあります。
4歳以下のお子さんは、まだ嚥下機能が未熟で、噛む力も不十分。咳をする力もまだ弱いため、気管に入りそうになったものを押し返すことが難しいのです。
たとえば、形状が丸い飴やブドウ、プチトマト、ピーナッツ、うずらの卵、白玉団子、球状のチーズなどは、表面がつるつるとなめらかなこともあり、ちゃんと噛む前に飲み込んでしまいやすい食材です。
3歳ぐらいまでは、ブドウやプチトマト、うずらの卵などは1/4のサイズにカットしてから与えましょう。アメやピーナッツ、グミといった嗜好品は4歳になってからと心得てください。
また、固く噛み切りにくい食べ物にも要注意。子どもによく与える果物では筆頭のリンゴですが、じつは誤嚥(ごえん)しやすいことが小児科ではよく知られています。ニンジンやセロリなど野菜スティックも窒息の頻度が高い食材。エビ、イカ、貝類も噛み切りにくいので注意しましょう。
食事中は「食べる」ことに集中させる
のどは空気と食べ物の通り道です。空気は気道に、食べ物は食道に進まなければいけません。のどで気道と食道にわかれるので、食べ物を飲み込むときは気道に入らないように、喉頭蓋(こうとうがい)という器官が閉じてふたのような働きをします。
このタイミングがずれると、誤嚥や窒息につながります。たとえば、食事中に泣き始め、息を吸った瞬間に飲み込んだものが気道の奥に入ってしまうということは少なくありません。食事中は次のことに注意しましょう。
●食べることに集中させ、口の中に食べものがあるときのおしゃべりは控える、遊び食べをさせない
●水分をとってのどを潤す(とくにパンやごはん、餅、焼き芋などは唾液を吸収してしまう飲み込みづらい食品)
●一口の量を多くしない
●仰向けに寝た状態や歩きながら、食品を食べさせない
●食事中にびっくりさせるようなことはしない
●大人がしっかり見守る
4cm以下のものに要注意!
幼い子どもの口の大きさは直径で約4cm。子どもの口の中に入るものなら、なんでも誤嚥や窒息の可能性があります。とくに2cm程度の小さなおもちゃは、のどを詰まらせやすく、窒息のおそれがありますので注意してください。もし、のどが完全に閉塞してしまうと、5分ほどで心停止にいたります。その場で詰まらせたものを取り除かない限り、かなり重篤な状態に陥ってしまいます。窒息のときのサインは次の通り。
●のどを押さえ、苦しそうにしている
●口に指を入れる
●声を出せない
●顔色が急に悪くなる
●くちびるが紫色になる
●呼吸が苦しそうになる
このようなときは、すぐに119番通報をし、次のような応急処置をします。
のどを詰まらせたときの応急処置
まず、子どもをうつ伏せにして背中の肩甲骨あたりを5回ほど手のひらで強く叩きます(背部叩打法)。
次に、1歳以上の子どもの場合は、子どもの背中側から両腕を回し、みぞおちの前で 両手を組んで勢いよく両手で腹部を上へ圧迫します(腹部突き上げ法)。異物が出てくるまで、腹部突き上げ法を繰り返します。
1歳未満の乳児の場合は、腹部の臓器を傷つけるリスクが高いため、腹部突き上げ法は行いません。その代わり、子どもをあお向けにし、みぞおちに指を立てて5回ほど圧迫します(胸部突き上げ法)。乳児の場合は、背部叩打法と胸部突き上げ法を交互に行います。
[1歳以上の幼児]
背部叩打法をしたあと、腹部突き上げ法(ハイムリック法)を繰り返す
[1歳児未満の乳児]
背部叩打法と胸部突き上げ法を繰り返す
それでも窒息を解除することができず子どもの反応がなくなったら、直ちに心肺蘇生を開始し、救急隊が到着するまで続けます。周りの人に応援を頼むことも忘れてはなりません。
教えてもらった先生:五十嵐 豊(いがらし ゆたか)先生
日本医科大学付属病院 高度救命救急センター 講師 医学博士。日本救急医学会 救急科専門医。日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医。窒息事故の多い日本から、世界の窒息事故を減らすため、"MOCHI"という学会主導のプロジェクトを行っており、共同代表を務める。