薬の正しい服用法

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上向いてゴックンはダメ!

薬をのむとき、あごを上げてのみ込もうとしていませんか?
じつはこのやり方、薬や水が誤って気管に入ってしまうリスクがあります。
薬の正しい服用法を医薬品に詳しい東京薬科大学の成井先生に伺いました。

口を湿らせ、少しあごを引くのがコツ

錠剤やカプセルをのむときは、背筋を伸ばして正面を向いて少しあごを引き、顔をやや下向きにしてみましょう。のどから食道へと流れがスムーズになりのみやすくなります。
錠剤やカプセルを流し込もうとつい上を向きがちになりますが、あごを上げると気道が開くため、誤嚥の恐れがあります。同じ理由で寝たままのむのもNG。また、カプセルは水に浮いてしまいやすいので、上を向いてのむと水だけをのみ込んでしまい、口の中にカプセルだけが残ってしまうことがあります。薬をのむときは体を起こしてからにしましょう。

コップ1杯程度の水か白湯でのむ

のみ薬はコップ1杯の水(または白湯)で服用するのが基本です。のみ薬を確実に胃に届けるために必要な量の目安がコップ1杯の水となります。
水なしで飲むと、薬が口のなかで貼りついたり、のどに引っかかりやすくなります。高齢の方は口腔内が乾燥しやすいので、服用前に口を潤してから薬を口に入れたほうがよいでしょう。
少量の水(または白湯)でものみ込むことができるかもしれませんが、薬が食道などに引っかかってしまいそこで薬が溶け出し炎症を起こしたり、効果が発揮でないことがありますし、胃に届いても胃の中で十分に薬が崩壊しない、薬の溶け出しがおくれるなどして成分の吸収率が低下し、薬の効き目が悪くなったり、効き目の発現が遅くなったりすることがあります。このように少なすぎる水での服用では、薬の効果に影響するリスクや、胃腸に負担をかけることがありますので注意してください。

ジュースで薬をのんでもいいってホント?

小児科などでは「のみづらかったら、ジュースやアイスに混ぜてのませてもいいですよ」と言われることがあります。
だからといって、どんな薬でもジュースでのんでいいというわけではありません。
炭酸飲料や100%のオレンジュースなどの酸性の飲料で薬をのむと、薬の吸収が遅くなって効果が弱まるものがあったり、苦味が増してのみにくくなったりすることもあります。また、グレープフルーツジュースは高血圧の薬の一種(カルシウム拮抗薬)の作用が強く出てしまうことがよく知られています。水(または白湯)で服用するのが基本です。

【薬と飲料・相互作用の例】

麦茶……あまり影響はない
牛乳、ヨーグルト……抗菌剤、制酸剤、腸で溶ける薬、鉄剤はNG
グレープフルーツジュース……降圧薬や高脂血症治療薬の一部の薬はNG
オレンジジュース……降圧薬の一部
炭酸飲料……胃薬はNG
コーヒー……鎮静薬、痛風治療薬、総合感冒薬、気管支喘息の薬はNG
アルコール……どの薬もNG

※相互作用とは、薬の効き目が強くなりすぎたり弱くなったりすること
※薬効群のすべての薬が該当するわけではない
※これ以外の薬でも相互作用を起こすことがあるので、医師や薬剤師に相談を

「食間」の指示は、食べている間?

薬をのむタイミングは主に食事に合わせるタイプと指定された時間にのむタイプ、症状が出たときにのむタイプがあります。
食事に合わせるタイプには食事の約60~30分前にのむ「食前」、食事の直前にのむ「食直前」、食事の後約30分以内にのむ「食後」、食事と食事の間にのむ「食間」があります。胃腸の負担を軽減するために「食後」にのむ薬もありますし、胃の中の食物との作用を軽減するために「食間」にのむ薬もあります。
指定された時間にのむタイプは「○時に」や「○時間おきに」と書いてあります。
症状が出たときにのむタイプは「とんぷく(薬)」と呼ばれ、痛みや熱、せき、かゆみ等、その症状がでてつらいときにのむ薬です。
これらのほかに「就寝前」などの記載がありますが、薬の効果を最大限に引き出すために、いずれもその指示(用法)通りにのみましょう。

薬が服用しにくい場合は?

錠剤が大きいからといって砕いたり、カプセルを開けて中身だけ取り出したりするのはやめましょう。とくに薬の表面がコーティングされているものは、有効成分が胃ではなく腸で溶けるようにしたり、ゆっくり溶けるようにしたり、光による成分の分解を抑えたり、苦味を抑えたりしているといった理由があります。
もし薬が大きくてのみこみにくい場合は、薬の形状を変更してもらうように医師や薬剤師に相談してみましょう。小さめの錠剤やOD錠(口内崩壊錠)という口に含むとラムネのように溶けるものなどがあります。
また、薬を包み込んで口内からのどへのすべりをよくする服薬補助ゼリーを利用するのもおすすめです。

(2023.6.14掲載)

教えてもらった先生:成井浩二(なるい こうじ)先生

薬剤師、薬学博士、日本地域薬局薬学会理事、東京薬科大学薬学部一般用医薬品学教室准教授

大学にてセルフメディケーション、セルフケアの講義をするかたわら、学校薬剤師として中学生に「正しい薬の使い方」を教えている。ドラッグストア等で医薬品販売に従事している登録販売者の教育にも長年携わり、現場で役立つ知識の普及に貢献。NHK番組「きょうの健康」、「NHKジャーナル」などに出演。

制作協力:NHKエデュケーショナル

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