ストレスと声がれ、失声

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突然、声が出なくなる!心因性失声症とは

ある日突然、声が出なくなる、声の出し方すらわからなくなる、という症状の病気があります。心の風邪といわれるうつ病と同じように、誰にでも起こる可能性のある「心因性失声症」について、パニック障害や不安障害の専門医である貝谷先生にお話を伺いました。

ストレスによる音声障害

「電話をしようとしたら、声がかすれてしまい、相手から聞き取れないと言われた」
「昨日まで普通に会話をしていたのに、今日は声の出し方すらわからない」
このように、声をうまく出せないという症状を「音声障害」といいます。

発症は10代から50代まで幅広く、女性に圧倒的に多い病気です。
音声障害の主な原因は、のどにできるポリープや腫瘍、炎症など声帯の器質的な疾患によるものです。器質的疾患とは、身体そのものに異常があり、症状がある状態を指します。検査を行えば症状の原因は見つかります。しかし、のどにあきらかな異常がなく、精神的な原因で音声障害が起こる機能性発声障害のうち代表的なものに「心因性失声症」があります。

心因性失声症は、突然起こることが多い病気です。声はでなくても、呼吸は問題なくでき、食事や嚥下(えんげ)も普通にできます。嚥下とは、口の中のものを飲み下すことを意味します。全く声が出ないわけでもなく、せき込んだり、泣いたり、笑ったりするときに、声がもれ出る人もいます。
しばらくすると、自然ともと通りになることも少なくありませんが、声が出るようになるまで長くかかってしまうケースもあるので、注意する必要があります。

心因性失声症の原因と治療

心因性失声症は、精神的なショックを受けたり、ストレス過多な生活が続いていたりすることで起こります。声は大事なコミュニケーション手段ですから、声が出ない不安はとてもつらいもの。ときには過呼吸を引き起こすこともあります。
まずは、耳鼻咽喉科を受診し、声帯や口腔内を検査して、器質的な異常がないかを確認します。とくに問題がない場合は、精神科や心療内科、音声専門外来を受診して、カウンセリングや心理テストなどで音声障害を引き起こしている原因を調べましょう。

心因性の病気の場合、治療法には個人差がありますが、早ければ早いほど予後が良いと言われています。治療の中心はカウンセリングとなりますが、周囲のサポートを得ながら生活を見直すと改善できることも多いので、一人で抱え込まないようにしましょう。

人前で声が出なくなる場合は社交不安症の場合も

5月の連休後に、「やる気が出ない」「眠れない」「食欲がない」といった、いわゆる五月病といわれる症状を経験している人は少なくありません。進学や就職、異動など4月から新しい環境で生活が始まった人はとくに、人間関係も大きく変わり、この時期は知らず知らずのうちにストレスをためてしまうことがあります。
雑談はできるのに、人前で話すときだけ強いストレスがかかって声がふるえて話せなかったり、オフィスなど静かな場所で電話に出ようとすると声が出なくなったりするなど、特定の場面になると、うまく声を出せなくなる場合は、人に注目される状況を過剰に恐れて不安になる「社交不安症」かもしれません。
これは性格などの問題ではなく、治療できる病気ですから、心療内科や精神科で相談してみましょう。

(2023.5.8 掲載)

教えてもらった先生:貝谷久宣先生

精神科医、医療法人和楽会理事長、京都府立医科大学客員教授、岐阜大学医学部客員臨床系医学教授

名古屋生まれ。神経病理学、生物学的精神医学の研究に従事し、ミュンヘン・マックスプランク精神医学研究所に留学。自衛隊中央病院神経科部長を経て1993年2月開院。著書多数。NHK「ガッテン」「美と若さの新常識」など多数出演。

制作協力:NHKエデュケーショナル

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