面接やプレゼンに役立つ!精神科医が教える深い呼吸の効果とは

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緊張すると震える声や裏返る声 声のうわずりと心の関係

人前で話すときに声が震えたり、うわずったり……、 緊張するとうまく会話ができなくなってしまう、
「面接が大の苦手」「プレゼンで失敗したくない」……。
そんな悩みを抱えている人におすすめの改善方法を、ストレス対策に詳しい専門の医師といっしょに考えていきましょう。

声が震えたり、うわずったりする原因は?

会議やプレゼンの時はもちろんですが、人生を左右するような受験に面接があったりすると、初対面の人の前で発言することを想像するだけで、多少の違いはあっても誰でも緊張するものです。声が震えたり、うわずったり、のどが詰まったようになって声が出にくく感じたり、時には声が出なくなったりする人もいます。
普段の生活では発声に何も問題ないのに、緊張するとうまく声が出なくなるのはどうしてなのでしょうか。考えられる原因はいくつかありますが、大きくは次の2つをあげることができます。

1.体がこわばり、呼吸が浅い

強い緊張やストレスを感じると、余計な力が入ることで体全体がこわばり、呼吸が浅く、早くなってしまいます。呼吸が浅くなると、おなかに力を入れられず、小さくて震えがちな声になる傾向があります。
また、首や肩周りの筋肉が緊張すると、横隔膜などの呼吸に使われる筋肉(呼吸筋)がこわばりやすくなるため、声がうわずってしまいます。のどの筋肉も緊張でこわばると、息が詰まったような違和感を覚えることがあります。

2.あがり症

声の震えだけでなく、心臓がバクバクしだしたり、冷や汗をかいたりするのがいわゆる「あがり」とよばれる状態です。これは血液中のノルアドレナリン値が上昇することで起こります。ノルアドレナリンによって交感神経が活性化されると、心拍数や体温、血圧が急上昇するため、顔色が悪くなったり、動悸や発汗、震えなどの症状が出たりします。「あがり」自体は誰にでも起こる正常な反応ですが、あがり症の人は、交感神経がより敏感で、あがりの症状が強く出てしまいます。長期間にわたって続く場合には、心療内科の医師に相談してください。

緊張しているときにためしたい対策とは

心と体は密接に結びついているので、緊張すると体はこわばりますし、リラックスすると体はゆるみます。体サイドからアプローチすることで緊張そのものをほぐす方法が「腹式呼吸」です。
腹式呼吸とは、お腹を膨らませるイメージで鼻からたっぷり息を吸い、口からゆっくり静かに吐く「深い呼吸」のことです。緊張しているときは交感神経が優位に働いていますが、こうした呼吸によって副交感神経を優位に働かせ心身をリラックスさせることができます。呼吸筋やのどの筋肉の緊張がほぐれると、呼吸も自然と整って、緊張するような場面であっても自分本来の声をとりもどして実力を発揮することができるでしょう。

【腹式呼吸のやり方】

口からゆっくり息を吐きながらおなかをひっこめます。このときおなかに手をあてると意識を集中させることができます。そして鼻から息を吸いながらおなかをふくらませます。気持ちが落ち着くまでくりかえしましょう。

腹式呼吸のほかに すぐできる効果的な方法

1 首のストレッチ

筋肉のこわばりをほぐすために、力を抜くことは大切なことです。その一つの方法に首を左右に回す方法があります。首に痛みを感じない程度に、できれば後ろが見えるまで回してみると効果的です。3往復を1セットにしてやってみましょう。

このストレッチは首にある頚部迷走神経と呼ばれる部分を伸縮させて刺激を与えます。適度に行えば副交感神経を活発にさせる作用があります。

軽く下を向きながら首を左右にゆっくりと3回往復する

2 緊張をほぐす香りをかぐ

リラックス効果やリフレッシュ効果のあるアロマオイルで嗅覚を通じて脳を刺激し、自律神経のバランスを整えます。外出先では好みのアロマオイルを垂らしたハンカチを口と鼻に軽くあてて深呼吸するのがおすすめです。
ハンカチに垂らしたアロマオイルの香りをかぎながら、ゆっくり深呼吸をしましょう。

3 リラックスを促すツボを押す

緊張をとるやり方として、手のツボである合谷、内関そして神門の順に左右の自分の手を3回ずつ押さえる方法があります。

①合谷(ごうこく):人さし指と親指の骨が交差するくぼみ部分

②内関(ないかん):手首中央から指3本分ひじ側の部分

③神門(しんもん):手首の小指側にあるくぼみ部分

【つぼの押し方】

①合谷⇒②内関⇒③神門の順に3回ずつ押す。左右の手それぞれ行う

(2022.12.23 掲載)

教えてもらった先生:貝谷久宣先生

精神科医、医療法人和楽会理事長、京都府立医科大学客員教授、岐阜大学医学部客員臨床系医学教授

名古屋生まれ。神経病理学、生物学的精神医学の研究に従事し、ミュンヘン・マックスプランク精神医学研究所に留学。自衛隊中央病院神経科部長を経て1993年2月開院。著書多数。NHK「ガッテン」「美と若さの新常識」など多数出演。

制作協力:NHKエデュケーショナル

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