あなたの声は大丈夫? 声帯から知る若さの秘訣

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おしゃべりが減ると、気づかないうちに進むトラブルってなに!?
マスク生活だからこそ注意をしたい「声」のサイン

長引く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のまん延で、マスク生活も3年目となりました。
公共の場での会話は最小限にすることが求められ、リモート生活でおしゃべりを楽しむ機会も減っている昨今、あなたの「声帯」、気づかないうちに衰えているって知っていましたか。

疲れやすさに大きく関わる「声帯」

ペットボトルのふたが開けづらくなった、トイレでいきみづらくなった……。
これらが思い当たる人は、もしかしたら、のどにトラブルを抱えているかもしれません。
のどは、呼吸や発声、食事のときだけでなく、じつは力を入れたり、踏ん張ったりすることと密接に関係しています。
たとえば、重い荷物を持ち上げるとき、のどの奥でグッと力が入っている感覚がわかりますか。これは、のどの奥のほうにある「声帯」をピタッと閉じているのです。
声帯は、発声に最も重要な働きをしている筋肉で、肺につながる器官をふさぐように左右に一対あります。
この左右の声帯をピタッと閉じることによって、肺を風船のようにふくらませ、上体を安定させることができています。このとき、声帯がしっかり閉じていないと、空気がもれて力が入りづらくなるわけです。
 踏ん張る力が衰えると、いざというときに転倒しやすくなり、骨折につながるなどのリスクを高めることになります。
最近、つまずきやすくなったり、転びやすくなったという人は、声帯が衰えているのかもしれません。また、声帯がしっかり閉じずに隙間ができてしまうと食べ物が食道ではなく気管に入ってしまう誤嚥(ごえん)が増え、食事中にむせやすくなるばかりか、命にかかわる誤嚥性肺炎の危険も高めてしまうのです。

声帯トラブルの原因は「会話不足」です

声帯は筋肉と粘膜からできていて、それを動かす筋肉群も周囲についています。これを総称して、渡邊先生は「声筋(こえきん)」と呼んでいます。
齢を重ねると声筋も少しずつ衰えます。そして、その衰えを加速させてしまうのが、筋肉を使わず放置することで知らず知らずのうちに萎縮させてしまうこと。つまり、声を出さない生活をしていれば声筋もまた弱ってしまうのは自然なことです。
このコロナ禍で、誰もが声を発する機会が減っていますから、声帯機能の衰えも進みやすいと考えられます。
次のチェック表で、声帯の健康度をチェックしてみましょう。

【声帯の健康度チェック】

次に当てはまる項目にチェックをつけてみましょう。
1つでもチェックがついたらトレーニングを始めるタイミングです。5つ以上の場合は、医療機関で受診しましょう。

□マスクをしていて息苦しさを感じるときがある

□のどの痛みを感じて、のど飴をよくなめる

□ゴルフの飛距離が落ちてきた(またはスポーツが楽しめなくなった)

□便秘がち

□自分の声が老けたと感じる

□十八番の歌がキーを変えないと歌えなくなった

□長く話すと息苦しくなることがある

□この1カ月、家族以外と話していない

□食事中やお茶を飲むとき、よくむせる

□ペットボトルのふたが開けづらい

□荷物が重くならないよう買い控えることがある

□つまずく(または転ぶ)ことが増えた

□長い距離を歩くのはつらい

□会話中、聞き返されることが増えた

□呼びかけても無視されることが増えた

□外出や、人と会うのをできれば避けたい

□身近な異性から、異性として扱われなくなった

 

今すぐ実践! 声筋(こえきん)トレーニングで若さを守ろう

声筋(こえきん)は身体の中では小さな筋肉群ですが、若さを保つ重要な筋肉のひとつでもあります。筋肉は適度に使うことで鍛えることができます。 家族や友人と楽しい時間を過ごして声を出す機会を増やしみてはいかがでしょうか。また、本や新聞を朗読してみたり、日本語よりも息を強く吐いて発音する英語やフランス語などの外国語のレッスンを始めてみたりするのもおすすめです。  次のトレーニングも生活にとり入れて、声筋を鍛えてみましょう。

声筋トレーニング① の⤴の⤵発声法

鼻腔や口腔に響かせやすい「NO(の)」の発声で声筋全体を鍛えます。途切れずに行い、とくに低い地声と高い裏声の転換点を意識するのがポイントです。

①背筋を伸ばし、頭頂部が引き上げられるような姿勢をとります。

②口をすぼめ、「の⤴」と低音から高音まで鼻に抜けるように発声します。

③途切らせずに、続けて高音から低音へ「の⤵」を発声します。

②〜③を10回繰り返します。これが1セット。慣れるまでは、1日に1、2セットを行います。できれば1日3セット、2、3時間の間隔を空けて行いましょう。

声筋トレーニング② イェイ!プッシング法

声筋の瞬発力を鍛え、いざというときに必要な声をしっかり出せるようになる方法です。のどが十分にうるおっている状態でやりたいトレーニングなので、入浴時におすすめです。

①胸の前で手を合わせ、両手を押し合うタイミングで「A(エーィ)」と発声します。

②続けて、両手を押し合うタイミングで「B(ビィー)」と発声します。

③さらに、両手を押し合うタイミングで「C(シィー)」と発声します。

①〜③の「A、B、C」を連続して行い、5回繰り返しましょう。
※血圧が高いなど循環器疾患がある方は主治医と相談してから行ってください。

(2022.9.29 掲載)

教えてもらった先生:渡邊雄介先生

医療法人財団順和会 山王メディカルセンター副院長、国際医療福祉大学医学部教授、 山形大学医学部臨床教授、東京大学医科学研究所附属病院非常勤講師。
専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。音声の専門医として一般の方からプロフェッショナルまで幅広い支持を得ている。著書に『マスクをするなら「声筋」を鍛えなさい』ほか多数。

制作協力:NHKエデュケーショナル

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