鉄不足が関係している? のどの「つかえ感」にご用心

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舌の炎症や口角のひび割れ、氷を無性に食べたくなるのも鉄不足のサイン。女性に多い「鉄欠乏性貧血」と、のどとの意外な関係

「のどに何かつかえている感じがする」「食べ物が飲み込みにくい」。そんな症状に、鉄不足や鉄欠乏性貧血が関係していることがあります。皿谷先生にお話を伺いました。

貧血とは、血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態のことです。貧血の原因はさまざまです。最も多いのは、鉄分不足が原因の「鉄欠乏性貧血」です。とくに月経のある女性や成長期の子どもに多くみられます。また、妊娠・授乳期など、鉄の必要量が増える時期に起こりやすくなります。
ヘモグロビンには、全身に酸素を送る働きがあるため、貧血になると、酸素を運ぶ力が低下し、疲れやすさ、だるさ、めまい、立ちくらみ、頭痛、動悸、息切れなどがみられます。症状のあらわれ方は、貧血の程度だけでなく、進行の速さや年齢、基礎疾患(慢性的な病気)によっても異なりますが、口の中やのどにも変化があらわれることがあります。たとえば舌が炎症を起こして赤くなったり、ヒリヒリしたりする「舌炎」や口の両端が切れて痛む「口角炎」も、鉄不足でみられる症状の一つです。
ほかにも、爪の中央がへこんでスプーンのような形になる「匙状爪(さじじょうづめ)」がみられることもあります。さらに、鉄欠乏で比較的よく発症するのが「氷食症(ひょうしょくしょう)」です。氷を無性に食べたくなって製氷皿の氷を何個もかじる、氷を毎日のように大量に食べる、といった行動があらわれます。すべての鉄欠乏性貧血にみられるわけではありませんが、氷食症がある場合は鉄欠乏を疑う重要な手がかりになります。

鉄が足りなくなると、めまいや立ちくらみなどのほか、舌炎や口角炎、匙状爪(さじじょうつめ)、氷食症などがあらわれることも。

また、鉄欠乏性貧血のある人の一部では、のどと胃をつなぐ食道の内側に薄い膜のようなものができ、食道の一部が狭くなることがあります。これを「食道ウェブ」といい、食事をするときに固形物が通りにくくなるため、「のどにつかえる」「飲み込みづらい」と感じることがあります。鉄欠乏性貧血のある人に、このような食道ウェブと飲み込みづらさがみられる状態を、「プランマー・ヴィンソン症候群(別名:鉄欠乏性嚥下困難)」といいます。現在ではまれな病気ですが、鉄欠乏との関連が知られています。鉄を補充することで嚥下症状が改善することは多いものの、食道の狭窄が強い場合や症状が残る場合には、内視鏡で食道を広げる治療が必要になることもありますから、医療機関を受診しましょう。

鉄不足になる原因

鉄欠乏性貧血に女性が多いのは月経による出血があるからです。月経の量が多い人はとくに、毎月少しずつ鉄を失うため、鉄不足になりやすいのです。妊娠や授乳、成長期など、体が必要とする鉄の量が増える時期も注意が必要です。
一方、男性や閉経後の女性では、胃・十二指腸潰瘍や胃がん、大腸がんなどによる消化管からの出血が貧血の原因となっていることがあります。そのため、鉄不足が見つかったら、鉄を補うだけでなく「なぜ鉄が不足したのか」を調べることが重要です。
鉄分は私たちの体にとって欠かせない栄養素ですが、食事から吸収される割合は高くありません。過度なダイエットや偏食を改め、鉄分を多く含むレバーや赤身肉、カツオ、サンマ、アサリ、納豆、小松菜などを日々の食事に上手に取り入れてみましょう。肉や魚に含まれる鉄は比較的吸収されやすいといわれていますが、植物性食品に含まれる鉄はビタミンCを含む食品と一緒にとると吸収されやすくなります。

吸収率のよいレバーや牛肉、赤身の魚などの動物性の鉄と、納豆や小松菜、ひじき、ほうれん草などの植物性の鉄をバランスよく。

なお、明らかな鉄欠乏性貧血では、食事だけで十分な鉄を補うには時間がかかるため、鉄剤の内服などの治療が必要になることが少なくありません。まずは内科などで血液検査を受け、鉄欠乏の程度と原因を確認してください。月経過多が疑われる場合は婦人科、消化管出血が疑われる場合は消化器内科での評価が必要になることもあります。
ただし、のどの違和感や痛み、飲み込みにくさが強い場合は、鉄欠乏性貧血だけでなく、ほかの病気の可能性もあります。 たとえば、甲状腺の病気、胃酸の逆流(逆流性食道炎)、咽頭や喉頭の炎症、食道の運動異常、さらには腫瘍性の病変(がん)などでも似た症状が起こります。とくに、飲み込みにくさが徐々に悪化する、体重が減る、食べ物が実際につかえるといった場合は、必要に応じて耳鼻咽喉科や消化器内科などを受診し、原因を確認するようにしてください。

(2026.10.12掲載)

皿谷健(さらや たけし)先生

杏林大学 呼吸器内科 教授
日本マイコプラズマ学会理事、日本感染症学会感染症専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本内科学会総合内科専門医
聴診を含めた身体所見、胸水診断や間質性肺炎、マイコプラズマ肺炎の研究を行う。漢方診療も行っている。

制作協力:NHKエデュケーショナル

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