のどコラム

予防

子どもが初夏から秋にかかりやすい感染症と対策
Happynote2020年夏号掲載(2020年6月発行)

お話

成相 昭吉 先生
松江赤十字病院 
感染症科 部長

取材・文=中島博子

イラスト=岩藤昌子

Q1. 初夏から秋にかけてお子さまが気をつけるべき感染症には、どのようなものがありますか?
A1. お母さんから生まれる前にもらっていたウイルスに対抗できる免疫は、生後90日ごろから減少し始め、生後6か月になると枯渇します。すると子どもたちは3歳あたりまで、ウイルス感染症を次々と経験していきます。
 ウイルス感染症には季節性が認められます。初夏から秋にかけて流行するもの、晩秋から春にかけて流行するものに大きく分けられますが、アデノウイルス感染症のように1年を通して認められるものもあります。しかし、地球温暖化の影響か、冬に流行してきたRSウイルスによる呼吸器感染症は7月ころから認められるようになり、季節性が乱れてきています。
 今回、初夏から秋にかけて流行する子どもの感染症の原因ウイルスを3つ取り上げます。エンテロウイルス、パレコウイルス3型、そしてRSウイルスです。
Q2. 3つの感染症それぞれについて、かかりやすい年齢、潜伏期間、治るまでの期間を教えてください。
A2. エンテロウイルスは総称です。A・B・C・Dの4つのグループに分かれますが、AとBが重要で、それぞれ20以上と60以上の種類があります。Aには手足口病を起こすウイルス、Bには新生児・乳児に発熱・発疹を生ずるウイルスが含まれます。手を介した接触感染で感染し、3〜6日の潜伏期を経て発症し、発熱を認めた場合は3日ほど続きます。
 手足口病は、近年、奇数年に流行しています。2019年にも大きな流行がありました。水疱を伴う発疹が口・手のひら・足の裏に認められるのが特徴でしたが、最近は発疹が多様化し、他の疾患、例えば水痘や風疹との見分けに苦慮することも少なくありません。まれに、発症後2か月して爪が脱落することがあります。これを爪甲剥離症と呼びます。
 一方、Bのなかには89日齢までの新生児・早期乳児に発熱を生じさせるウイルスが多く含まれています。年ごとに問題となるウイルスが異なり、またウイルスによって病原性が異なるため、時に生後7日までの新生児では生命にかかわることがあります。
 パレコウイルス3型は、なじみの薄いウイルスかと思いますが、2011年以降、国内では2〜3年周期で流行しています。多くは89日齢までの新生児・早期乳児が発症します。このウイルスにり患歴のない母体から生まれた場合に、手を介した接触感染のあと、3〜6日の潜伏期を経て、発熱・腹部膨満・頻脈・四肢の発疹を認め、臍が突出することも少なくありません。発熱は3日ほどで解熱します。家族の状況を尋ねると、ほぼ同時期に母親、父親いずれかが、からだ全体が痛い、だるいと訴えることがあります。これを流行性筋痛症と呼び、り患歴のない成人の同ウイルス感染の臨床像となります。
 RSウイルス感染症が問題となるのは新生児から6か月齢までの乳児です。鼻粘膜に飛沫や手を介した接触で感染し、3〜4日ほどの潜伏期間を経て、鼻水・鼻づまり・湿った咳の上気道症状と発熱で発症します。発熱は3日ほどで治まりますが、鼻水や咳は10日ほど続きます。問題は、4割のお子さんが発症後4日前後して下気道炎を生じ、呼吸が苦しくなって、経口摂取・睡眠に影響がでて入院対応が必要となることです。流行には気温と湿度が関係していることがわかってきました。梅雨終盤から夏、そして秋にかけての流行条件は、気温26℃以上、湿度70%前後のようです。
Q3. 子どもが感染症にかかっているのではと思った時、どのように対処したらよいでしょうか。
A3. 妊婦さんを対象とした母親学級では、生まれてから3〜4か月までの間に病院受診をすべき〝病気の症状〞を2つ伝えています。1つは89日齢までの新生児・乳児が38℃以上の発熱を認めた場合です。入院対応となり、細菌感染症を疑って検査を行ったうえで抗菌薬投与を開始します。もう1つは、発熱はないものの咳が多いと感じた場合で、気づいてから3日目にはかかりつけ医を受診し「百日咳が心配で受診しました」と伝えるよう指導しています。
 一方、90日齢以降の乳児・幼児が38℃以上の発熱を認めた場合は受診を急ぐ必要はありません。この際、鼻水がおびただしければ呼吸器ウイルス感染症による〝かぜ〞を考えます。鼻水がなければ〝かぜ〞ではないと考えます。ちなみに、エンテロウイルスは小腸に感染して増殖しウイルスが血液をめぐる際に発熱を生じますから、鼻水は認めません。いずれの場合でも、ひとまず翌日にかかりつけ医を受診すればよいと思います。ほとんどのウイルス感染症は3日以内に解熱しますので、発熱が4日目を迎えた場合には再受診するようにしましょう。
 実際、発熱が4日を超えるウイルス感染症は多くありません。3歳までの乳幼児にはアデノウイルス感染症を疑う必要があります。咽頭結膜熱(プール熱)の原因ウイルスですが、目が充血し、のどが赤くなることはまれです。
 子どもが4日以上の発熱とともに咳を認める場合、通常、細菌性肺炎、マイコプラズマ肺炎などを疑います。しかし、2020年3月以降、国内でも感染拡大が続く新型コロナウイルス感染症の症状は成人も子どもも大きく変わらず、持続する発熱と咳です。PCR検査を実施するのも発熱や咳が4日以上続く場合となっています。中国や韓国の報告を見ると、新型コロナウイルス感染症小児例は患者総数の2〜5%に過ぎません。また、ほとんどが両親を含め同居する成人感染者が認められる家族内感染例です。不安が大きくなりますが、冷静にまずはかかりつけ医に連絡し、受診するようにしましょう。
Q4. 子どもが感染症にかからないようにするため、気をつけるべきポイントはどんなことですか?
A4. やはり最善の感染予防策は、ワクチン接種です。健康被害の大きい感染症にかからないために、重症化を防ぐために、接種が可能なワクチンを、接種が可能な時期になったら、その都度のプレゼントとしてやっていただきたいと思います。乳幼児に発熱・嘔吐・下痢の胃腸炎を生ずるロタウイルスに対する経口接種ワクチンが2020年10月から定期接種となります。生後6週からおおよそ生後6か月までに4週間ごとに2回(ロタリックス®)または3回(ロタテック®)を終了する必要があります。費用はかかりますが、現時点では2か月齢になったら定期接種のB型肝炎ワクチン・小児肺炎球菌ワクチン・ヒブワクチンと一緒にロタウイルスワクチンの接種を受けるようにしましょう。また、費用はかかりますが、6か月齢になったら毎年10月からのインフルエンザワクチンを、1歳になったらおたふくかぜを予防するムンプスワクチンも接種しましょう。おたふくかぜは4〜5年周期で流行します。発症した場合、300人から1000人に1人の割合で難聴を生じます。聴力を守るための大切なワクチンです。
Q5. 感染症にかかった場合、どんな薬が処方されていますか?
A5. 子どもたちに日常発症する感染症を、〝小児市中感染症〞と呼びます。原因はウイルスか細菌です。このうち、ウイルスに対する薬剤を〝抗ウイルス薬〞と呼びます。有名なのが、インフルエンザに対する抗インフルエンザ薬です。乳幼児ではオセルタミビルがよく処方されます。他には水痘に対するものがあります。しかし、〝抗ウイルス薬〞は極めて少数です。したがって、多くのウイルス感染症に対しては症状を緩和させる対症療法が基本となります。
 一方、細菌感染症には抗菌薬(抗生物質)が効果を期待できます。大切なのは、診断とともに想定される原因菌について説明があり、効果が期待される抗菌薬の選択と効果判定についても説明がなされているかです。感染症によって原因菌は異なり、投与する抗菌薬も変わってきます。説明をよく受けたうえでお子さんに服用させてください。
Q6. 感染症にかかり、家族で看病する際、二次感染をぐための注意点はありますか?
A6. 細菌感染症のマイコプラズマ肺炎やA群レンサ球菌扁桃炎では飛沫により家族内感染することがありますが、ほかの細菌感染症では家族内伝播はほとんどありません。乳幼児の発熱の原因のほとんどはウイルス感染症で、子どもたちの間で二次感染がよく認められます。ウイルスは、その構造から消毒用アルコールで消失させることができるウイルスとできないウイルスがあります。また、感染ルートから鼻水や咳の飛沫が接触感染・飛沫感染するもの、便中に排泄されて接触感染するものに分かれます。子どもたちにマスク装着や手洗い励行は容易ではありません。おむつや便の扱いもなかなか大変です。それでも、限界があることを理解したうえで、養育にかかわる人たちは可能な限り、マスク着用と手指衛生、そして環境衛生に努めることが大切です。
Q7. 最後に、新型コロナウイルスについて、家族で気をつけるべき点を教えてください。
A7. 4月初旬に急激に感染が拡大するアメリカから、新型コロナウイルス感染症の臨床像に関する報告がありました。感染症例全体における18歳未満例の割合は少なく1.7%でした。しかし、10歳以上の症例が多い傾向にありました。また、入院率は1〜17歳が10〜20%であるのに対し、1歳未満乳児例は60%となっていました。入院例は呼吸器や循環器に基礎疾患のある子どもたちが多くなっていました。
 新型コロナウイルス感染症は、子どもでは感染部位である肺へのウイルスの結合が少ないため大人に比べ、少ないと推測されています。子どもの症例のほとんどが家族内感染例、つまり親から伝播した症例です。このウイルスは人が運び伝播・拡散していきます。家庭に持ち込まないために、家族全員で〝3つの密〞、「密閉」、「密集」、「密接」を避ける行動を取るように努めていただきたいと思います。

※2020年4月3日の取材内容に基づき作成されたものです。

Profile
成相 昭吉先生

松江赤十字病院 感染症科 部長。
1984年島根医科大学卒。横浜市大・島根大学小児科臨床教授。
専門は、小児感染症、予防接種、漢方薬。
診断と治療社小児保健雑誌「チャイルドヘルス」編集顧問。

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