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「耳鼻科医から見たアーティストと演奏 第15回」を公開しました

2023.01.27 お知らせ

耳鼻科医の立場から、医学と演奏を探る

耳鼻科医から見たアーティストと演奏 第15回

ゲスト:北原幸男(指揮者)、お話:竹田数章(仙川耳鼻咽喉科院長)

宮内庁楽部洋楽指揮者を務めていることから、天皇皇后両陛下御即位のパレードで、自身で作曲した行進曲《令和》を指揮したように、皇室関係での演奏が思い浮かぶ。<音楽之友社刊「音楽の友」2023年1月号掲載>

 

鼻呼吸

北原

普段から身体のことにはとても興味を持っています。ぜんそくのアレルギー体質だったものですから。私には尺八奏者という選択肢もありましたが、息子にはなかなか厳しいなと父が思っていたこともあり、その道には進みませんでした。いまはよくなりました。そのなかで、長年お世話になっている東洋医学の先生に、鼻呼吸が大切であることを教えていただきました。

竹田

鼻呼吸はとても大事です。生物の進化を考えても、鼻が本来の空気の通り道で、口はどちらかといえば食べ物の通り道です。鼻で呼吸することでメリットもたくさんあります。まずは、加湿。潤すことができます。口呼吸をすると、口の中やのどが渇くので、声にもよくありません。また、鼻から吸うことでチリを除くこともできます。チリを体内に入れてしまうと、呼吸器に悪影響が出ます。それから、加温です。鼻のなかを空気が通るために少し温度が加わります。冷気を吸うのも刺激になってしまいます。人間は喉頭で声を出しますが、鼻呼吸のほうが、喉頭との関連がつきやすくなります。それから横隔膜も本来、呼吸の筋肉ですけれど、横隔膜との関連も鼻のほうがつきやすいのです。鼻をつまんで息をしていただけばわかりますが、口で呼吸すると前胸部の前のほうだけが胸郭が持ち上がるようになりがちです。鼻から吸うと横隔膜が下がり、腹式呼吸になりやすいですね。

北原

私もヨーロッパを本拠にしていたときに、子供がおしゃぶりをくわえることで鼻呼吸を覚える話を聞いたことがあります。日本では歯並びが悪くなるとの理由で、おしゃぶりをあまり勧められていないようです。鼻呼吸は、口で呼吸するよりもはるかに筋肉が連動して動きやすい。大学で指揮を指導していますが、呼吸や身体の使いかたはとても大切なのだと感じています。

道下

ヨーロッパで活動していたときは、体調はいかがでしたか。

北原

いろいろな場所を転々とすることもありましたし、指揮だけではなく、コレペティトゥーアもやっていたので、休みなしで本番が続いたり、本番の日も別の演目の稽古を行っていたりもしました。疲労がたまったとき、呼吸症状が出やすかったですね。でも、ヨーロッパはちょっと都心を離れると森や公園もありますので、いつもよい空気を吸い、自然に触れる機会も多くありました。

竹田

負担がかかりやすく、やりすぎると喉を痛めます。ノドを痛めないように、負担の少ないクラシック的な発声を混ぜるやりかたもあります。

道下

喘息の治療にはとてもよい環境ですね。

 

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